※この話は『王受け専用妄想吐き出し場』で流した
タイトル:『期待+動揺+罪悪感』『甘い罠』とリンクしています。
(上記2作はいずれ変更を加えて正式アップします)


とりあえず以下を踏まえて読んで頂ければ問題ありません。

・罪悪感を持ちつつ、皆に内緒でバクラと会う王サマ
・場所は公園
・王サマはブランコにちょこん










【背徳の森】


「王サマ?泣いてんの?」

わざとらしく言って、涙を拭うバクラを遊戯はキッと睨み付けた。

時刻は二時。約束の一時を疾うに過ぎている。

「自分から誘っておいて、また遅刻か?」

「うちの宿主サマが夜行性なの知ってるだろ?寝かしつけるの、これでも苦労したんだぜ?」

小首を傾げて悪びれもなく言い、バクラは遊戯の手を取った。

続いてその甲にそっと口付ける。

その振る舞いは『王子様』を思わせる紳士的なものだったのだが、どこか演技染みており、却って失礼にも取れた。

「さあ参りましょうか、オヒメサマ?」

続けられた言葉は、やはり小バカにされているようで面白くない。

「…誰がお姫様だよ…」

憮然として呟くと、「アンタ以外どこにいんだよ」と即行で返された。

「ホラ、ワガママ言ってねえでとっとと立ちな」

「どこに行くんだ?」

「どこでもいいだろ。いつも適当じゃねーか」

早く、と催促するように手を掴まれ、遊戯は渋々腰を上げた。

確かに、いつも行き場所など決まっていないのだ。

 

バクラに手を引かれるようにして、遊戯は道を歩いていく。

歩幅が違うので普通なら彼は引き摺られるようになってしまうのだが、こういうところでバクラは優しい。きちんと遊戯に合わせてくれる。

(…べつに、優しくなんてしていらないのに)

抗議するようにバクラの手を強く握ったが、バクラは痛みなど感じなかったらしい。何でもない顔で、さっきより少し強めに彼の手を握り返してきた。

(痛い…)

それは決して強い力でなかったけれど、遊戯は顔を顰めた。

バクラの酷く冷たい手が何故か温かく感じられ、泣きそうに苦しかった。

 

周りを見れば、もう外灯は数えるほどしかなくなっていた。

中でもバクラの見据える先は木が鬱蒼と茂っていて、人などまるでいなさそうだ。

本能的に、遊戯は足を止めた。

行ってはいけないと警告音が聞こえる。

ピタリと止まった足音にバクラはくるりと振り返った。

「どうした、王サマ?」

「何しに行くんだ?この先に何かあるとは思えないぜ」

繁華街のゲームセンターや飲食店なら今までバクラと行ったことがあるが、この通りは明らかに、それらと異なる雰囲気を醸していた。

「あるぜ。楽しいトコロだよ」

「楽しいところ?」

「そ。王サマが知らないだけで、結構穴場なんだぜ」

言われて前を凝視するが、依然として楽しいものがあるようには思えない。

光も人気も無く、あるのは暗い森だけだ。

いぶかしむような表情のまま前を見つめる遊戯を、「行って見りゃ分かるよ」とバクラは強引に引っ張った。



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